悪性リンパ腫と診断されるまで

ちょっと見て!

母はそう言って頭のキズを
見せてきた。

60代後半の割には
白髪が少ない
自慢の髪をかき分けた
その先には1cmほどの傷が
ぱっくりと口を開けていた。

「あ~これは
縫合手術したほうがいいねぇ。」

私が言うと、母は
「えっ?これ、どうなってる?」
と不安気な顔で私に聞きました。

これまでケガや病気とは
縁遠い人生を送ってきた母にとって
自分の身に起きた「異変」は
未知ゆえの恐怖だったと、
その表情と声から伝わってきました。

それに引き換え私は・・・

ヤンチャな子供時代を
過ごしてきましたので
「ケガのベテラン」でした。
(母に迷惑をかけながら・・)

おかげでこの様なケガには
慣れっこです。(笑)
母のキズの状態を見て
‘どうすべきか‘
すぐに判断することができました。

出血が止まらないので
ガーゼで強く押さえながら
急いで病院へ向かいました。

そして、母をオペ室へ。

付き添ってもらえると
思っていた母は、

ドクターに、一人で入るように
促され、不安そうに
こちらを振り返りながら
入って行きました。

初めての登園か(笑)

もう、子供を送り出す母の気持ちでした。

オペ室から出てきた母は
すっかり脱力した様子でした。
頑張った様です。

・・・思えばあの頃から
ちょっと転ぶことが増えたな、
と違和感を感じていました。
「年齢」のせいかな、と
軽く考えていました。

駐車場で振り返って転倒、
家の中のいつもの段差で転倒、
そんな小さな異変が
少しづつ増えていきました。

世の中でコロナが騒がれ始めた頃
母を微熱がおそいました。

よっぽど辛かったんでしょう、
「病院へ連れてって欲しい」
と母が自らそう口にしました。
こんな事は初めてです。

「寝てれば治るわ!」と言って
テレビを見ながら(聞きながら)
眠ってしまう。
そしてケロッと復活するのが
母の「病気撃退法」だったのに。。。

かかりつけ医も居ないし
微熱あるけど、なんだか
「コロナ」っぽくはない気がする。

一体どこの病院なら
診てくれるんだろう?
と悩んでいたら

「あそこの女医さんの内科がいい!」
と母が珍しく指名しました。
そぐにその病院に電話をして
診察をお願いすることに。

風邪でもなければ
コロナでもない。
結局原因はわからずじまい。
抗生剤と解熱剤を処方され、
その日は帰宅しました。

薬のおかげで
病状は多少落ち着いたものの
すっきりと完治はしませんでした。

なかなかすっきりしない
体調のまま再び病院を
訪れた時の事でした。

母が、恥ずかしそうに
切り出しました。
「先生、実は・・・」

そして見せてくれたのは
足の付け根にできた
膿パンパンに溜まった
大きなデキモノでした。

あ!そういえば、夏の終わり頃
「テニスボールが当たった所に
コブができたけど、
なかなか治らないんだ、」
と母がため息交じりに
言っていました。。。

え?コブが
こんなにデッカく???
しかもパンパンに
膿んでるじゃん?

「痛くは無いんだよ」
と母は言うけど
そのおおきな
膿パンパンのデキモノが
痛くないなんて、嘘でしょ?
とりあえず信じられなかったし
我慢しているんだと
思いました。

「なんじゃこりゃ???」
私の困惑をよそに
事態は急展開。

内科の女医さんは、
おもむろにメスを持ち
躊躇なくそのデキモノを切り
溜まった膿を出し始めたのです。

「えっ?内科なのに、
そんな事するー?」と
私はただ、驚きました。

なんでも女医さんの旦那さんは
外科医なんだそうで。
院内には一通りの
外科の医療道具が
揃っていたんです。

そして、女医さんは
「明日、主人が居る時間に
また、来て!」と、
びっくりするほど
「かるーく」おっしゃいました。

(・・・そんな簡単な感じでいいの?)

私があっけにとられている間も
目の前では女医さんが、
かなり強引にグイグイと
膿を絞り出しています。

母は、いざ処置が始まると
「痛くない」と言っていましたが
その顔は苦痛に歪んでいました。

かなり痛そうだったのを
今でも鮮明に覚えています。
横で見ているだけで
胸が締め付けられる様でした。

母のきれいな髪に
白髪が一気に増えた様に
見えました。

翌日。
「今日は何をされるのだろう?」
と怯えた表情の母を
励ましながら
病院へ連れて行きました。

外科医の旦那さんに
診てもらったところ
「どーやらただの膿のコブでは
ないみたいだなぁ。」

ドキッ、と心拍数が上がりました。
得体のしれない「何か」が
母の体にある。。。

「詳細を調べましょう。」と
旦那さんの働く外科医院へ
すぐに向かいました。

ところが、そこでも、
もっと詳細に調べる必要がある、
と「大学病院」へ回される事に
なってしまいました。

(たらいまわし?)
詐欺にでも遭っているの?

現実逃避したくなるような
状況であるにも
かかわらず翌日、
母の微熱は下がり割と元気。
なんと、営んでいる居酒屋の
下準備をして
常連客に開店時間まで
お知らせしてから
大学病院へ向かいました。

外科の診察室で、症状を話し
次は、処置室へ回り
処置室内でも移動があった様で
いつまで経っても、
母は出てきません。

気づけば院内は、
午前の診察時間を終えて
あんなにいた
患者さんは居なくなり
ポツーンと私一人だけ。

それでも母が出てこないので
心配も、限界になり
そっと
処置室内まで覗きに行ってみると
横たわったまま
そわそわしている母を発見しました。

覗いている私に気づき
「あっ!ちょっと!どーしょー?」
と、今まで見たことのない顔をして
小声で私に言いました。
「大変なことになってまったぁ〜!」

私は、正直なんとなく母が
病気に侵されているんだろう
という予感はありました。
大学病院に回されている時点で
めんどくさい病気だろうと。

すると、ドクターがやってきて
私に説明をしてくれました。

「膿を取り除ければ」と思い
調べていたのですが・・・
神経や血管にも広がっていて
難しい手術。

そして更に調べたところ
「悪性リンパ腫」と診断されました。

それから母と私の闘病生活が
始まりました。

すぐに兄と妹にLINEで知らせました。

私はあまり馴染のない名前の
血液の癌の名前に
「治らないんだな」と思い、
なんとなくですが
しばらくのスケジュールを
頭の中でぼんやり組み立てました。

誰も居ないガラーンとした
大学病院で、機械的に
支払いを済ませました。

最後までお読みいただき
ありがとうございました。

次回もお付き合い頂けると
幸いです。


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